Accueil / ホラー / 呪われた巫女様 / オスワサマ 1

Share

オスワサマ 1

Auteur: 景文日向
last update Dernière mise à jour: 2026-01-05 13:53:48

 俺の家、真田家には代々続く「見張り番」というシステムがある。大昔に捕らえた蛇神を、祀ると同時に封印しているのだという。十五を超えた人間にその役目がまわってくるので、今日からは俺が担当する。

「信、これがオスワサマ。大切にしてね」

 そう母親に言われ手渡されたのは、掌サイズの箱。本当にオスワサマはこの中に鎮座しているのだろうか。開くのは躊躇してしまう。なんせ、封印を解くということだから。

「わかった。大切にする」

 俺は自室に戻ると、鍵付きの引き出しに箱を入れた。現代になってまでそんな風習に付き合っていられない。この引き出しに入れておけば、盗む奴も居ないだろう。オスワサマが自分で封印を解けない以上、これが最善策だ。それにしても、見張り番なんて嫌な役目だ。何かあったら、真っ先に俺へと責任が降りかかる。十五が背負うには大役すぎるだろう。

 出かける準備をして、家を出る。今日は、幼馴染兼恋人である武田桃華との初デートだ。オスワサマに構っていられない。

「いってきます」

「遅くならないようにするのよ」

「わかってる」

 母親の声を背に受けながら、待ち合わせ場所に向かう。桃華はもう着いているだろうか。走っていくと、K駅の温泉モニュメントの前に彼女は既に立っていた。

「相変わらず早いな……」

 息を整えながら桃華に向き直ると、彼女は茶髪がかったウェーブヘアを弄りながら「そうかな?」と言った。

「私は普通に行動してるつもりだけど……。でも、今日が楽しみだったから早く着けたのかも」

 その言葉にドキドキしてしまう程度には、俺の心臓は強くない。

「俺も、今日が楽しみだったよ。じゃあ、行こうか」

 今、俺は彼女をエスコート出来ているだろうか。握った手は柔らかく、すべすべしている。改札を通り駅の中に入ると足湯があり、列車が来るまでの時間をそこで過ごした。

 列車の中では、今日観る映画の話をした。今流行りの恋愛ストーリーは、桃華が「観たい」と誘ってくれたのだ。昔は男勝りだった彼女の成長を垣間見れた気がして、微笑ましい気持ちになったのは内緒だ。映画館の最寄り駅に到着する頃には、俺もその映画に興味をそそられていた。正直誘われた当初は、何の興味もなかったのに。これが恋人の力というものか。

 映画館の最寄り駅は、県下第二の都市なだけあって栄えている。国宝である城目当てに観光客が訪れるため、彼ら向
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Latest chapter

  • 呪われた巫女様   オスワサマ 4

     家のドアを開け、入る。「ただいま」「おかえり、今日は朝早かったわね。夕飯はもう出来てるから、食べちゃって」 手洗いとうがいをさっと済ませ、夕食に手を伸ばす。今日はキノコを和えたものに、昨日のお浸しの続き。親に今日のことを悟られない様に、笑顔を取り繕って食べる。味は全然しなかった。 夕食と風呂を済ませ、ベッドに寝っ転がる。オスワサマが封印されていた箱を手に取ってみても、ただの古びた箱だという認識しか出来ない。しかし、これだけ厳重に封印されていた理由は何なのだろう。やはり、厄災なのだろうか。だとしたら、最悪俺は自害させられるかもしれない。S市は、時代の流れが何処かで止まっている奇妙な町だ。ことオスワサマに関しては、古くからの住民は気にかけている人間も多い。だからこそ、早く見つけ出して封印し直さなくては。俺の霊感は微々たるものだが、外部から有名な神職の人間を引っ張ってきてその力を借りれば容易いことだろう。 朝起きると、快晴だった。嫌になる程の。俺の心はこんなにも曇っているのに。天気に八つ当たりしても仕方がないので、制服に着替えて朝食を済ませる。歯磨きをし、家を出て桃華を迎えに行く。俺たちの仲は、周囲の人間も公認でひやかされることもあるけれど概ね上手くいっていた。「桃華、おはよう」 俺が彼女の家に着くと同時に、玄関のドアが開いた。「おはよう、信。……ねぇ、オスワサマ見つかった?」 首を横に振ると、「今日から私も協力するから! 一緒に探そう」と言ってくれた。どこまでも真っすぐな存在だ。そういうところが好きなのだが。しかし、放課後使える時間は限られている。効率的に捜査しなければ。 オスワサマのことばかり考えていたら、あっという間に放課後になっていた。昨日の疲労もあり、寝ていたのも一因かもしれない。「信、ほら行くよ。二手に分かれて探そっか」 桃華から差し伸べられた手を取り、立ち上がる。「俺は駅の方見てくる、望みは薄いけど」「じゃあ、私は公園を中心に見て回るね!」 役割分担が決まり、一時間後に桃華の家の前で集合することになった。  しかし、当たり前なのだが人目につくような場所に蛇神はいない。駅前なんて尚更だ。こんな田舎でも観光客が来るくらい、世界の人々は旅好きらしい。全く理解が出来ない。自分の見知った土地でしか安心できない俺の方が珍しいのかもし

  • 呪われた巫女様   オスワサマ 3

     桃華に「オスワサマ探しは俺一人でやる。だから、桃華も帰れ」と告げると、不服そうだったが何とか承諾してくれた。武田邸に桃華を帰らせ、一度状況を整理してみることにした。 オスワサマは、俺のご先祖様が封印した蛇神。今日からは俺が管理することになっていて、鍵のかかる引き出しに入れた。しかし帰ってきたら何故かその封印が解かれていて、今こうして探している……不可解なことが起きている。封印を解いた犯人は、どうやって俺の部屋まで入ったのか。それに、引き出しの鍵は壊れていなかった。つまり、力任せに開けた訳でもない。常識的に考えれば、あり得ない状況だ。なら、常識を打ち破って考える必要がある。それこそ、オスワサマ同じく人外であるなら、先ほど考えた不可解なことにも説明がつく。 今日はもう日が暮れてきたので、捜索は明日からにしよう。家に帰ると、夕飯のいい匂いが漂ってきた。これは恐らく、味噌汁の香りだろう。食欲が刺激される香りを嗅いだことで、少し元気が戻ってきた。オスワサマもきっと見つかるという希望的観測も出来るようになった。「おかえりなさい、何だかバタバタしてたわね」「悪いな、ちょっと色々あって」 母親には、言えなかった。「そう。これ運んでくれる? お父さん、今日はそろそろ帰ってくるはずだから」「わかった」 お盆に乗った料理は、どれも家庭的で調和がとれていた。父親の座る位置と俺の定位置にお盆を置くと、「助かったわ」と声をかけられた。その時だった。扉がガチャリと開いて父親が帰ってきたのは。「今日は全然ダメだったよ」 ゴルフの道具を携えながら、父は言う。「良いからさっさとご飯にしましょう」 華麗なスルースキルを発揮した母親につられ、「いただきます」と挨拶をし食べ始める。ほうれん草のお浸しはよく浸っているし、味噌汁には俺の好きな野菜類が沢山入っていた。「ところで信、オスワサマのこと大切にしてあげてね。オスワサマは一族を守る、大切な神様なんだから」 一気に体温が下がる感覚があった。それを悟られない様に「わかってる」と言うのが精いっぱいだった。本当に、どう探したものか。今日は土曜日で、明日が日曜日。俺は学生だから、動けるのは実質明日だけ。今日は早く寝て、明日に備えるか。そんなことを考えていると、あっという間に完食していた。「ごちそうさま」 お盆をシンクに運び、食器類

  • 呪われた巫女様   オスワサマ 2

     映画は無事に終幕を迎たので、昼ご飯を食べることにした。桃華はたこ焼き、俺は蕎麦。フードコートの店はどこも美味しそうなものを売っているが、俺たち学生には少し高い。よって、俺らの食事は簡素なものになる。桃華はそんなこと、気にしている素振りはないが。「ねえ、信。一個食べる?」 桃華はつまようじにたこ焼きを刺し、こちらに向けてくる。これは、あれか。あーんというやつか。据え膳食わぬは男の恥、俺は口を開きたこ焼きを頬張る。まだアツアツの中身に思わず水を飲むと、桃華はケラケラ笑っていた。「昔から変わらないな、ほんと」「だって、面白かったんだもん」 失態を見せてしまったが、今更なので気にすることはないだろう。俺はざる蕎麦を啜った。「ねえ、これ食べ終わったらショッピング行こうよ。ここにはあんまり来ないから」「いいぞ」 桃華の趣味に付き合うのも、また一興だろう。 ショッピングモールの中は、人だらけだ。県の中心部にあるからだろうか。カップルも多い。「あ、ここ見たい」 桃華が立ち止まったのは、シンプルな服が売られている服屋だった。確かに、彼女らしいと言えばらしい。店の中に入ると、ワンピースが割り引かれていた。もうこの季節でないことを実感するのは、案外服屋での配列かもしれない。そんなことを思いながら、桃華の方を見ると早速服を物色していた。「試着も出来ますよ」 店員が桃華に声をかける。「ええと……じゃあ、これとこれ、お願いします」「かしこまりました」 桃華が試着室で着替えている最中、店員に話しかけられた。「目がチャーミングな彼女さんですね」「ああ、まぁ……」 何と返答するか迷っていると、デニムスタイルの桃華が姿を現した。「どうかな?」「動きやすくて良さそうだな」 しかし、Tシャツ姿だと桃華の大きな胸が強調されている様にも見える。またドキドキしてしまった。「信がそう言うなら、買っておこうかな。すみません、これ買います!」 試着室に戻り、先ほどまでの服に着替える桃華。ワンピースだと体型がわかりづらいから、俺としてはこちらを着ていて欲しい。趣味を束縛する気はないが。 会計を終え、荷物を持ってやると「ありがとう」という言葉が返ってきた。「満足したか?」「うん、とっても。じゃあ、そろそろ帰ろうか。オスワサマも気になるし」 俺からしたらただの厄介

  • 呪われた巫女様   オスワサマ 1

     俺の家、真田家には代々続く「見張り番」というシステムがある。大昔に捕らえた蛇神を、祀ると同時に封印しているのだという。十五を超えた人間にその役目がまわってくるので、今日からは俺が担当する。「信、これがオスワサマ。大切にしてね」 そう母親に言われ手渡されたのは、掌サイズの箱。本当にオスワサマはこの中に鎮座しているのだろうか。開くのは躊躇してしまう。なんせ、封印を解くということだから。「わかった。大切にする」 俺は自室に戻ると、鍵付きの引き出しに箱を入れた。現代になってまでそんな風習に付き合っていられない。この引き出しに入れておけば、盗む奴も居ないだろう。オスワサマが自分で封印を解けない以上、これが最善策だ。それにしても、見張り番なんて嫌な役目だ。何かあったら、真っ先に俺へと責任が降りかかる。十五が背負うには大役すぎるだろう。 出かける準備をして、家を出る。今日は、幼馴染兼恋人である武田桃華との初デートだ。オスワサマに構っていられない。「いってきます」「遅くならないようにするのよ」「わかってる」 母親の声を背に受けながら、待ち合わせ場所に向かう。桃華はもう着いているだろうか。走っていくと、K駅の温泉モニュメントの前に彼女は既に立っていた。「相変わらず早いな……」 息を整えながら桃華に向き直ると、彼女は茶髪がかったウェーブヘアを弄りながら「そうかな?」と言った。「私は普通に行動してるつもりだけど……。でも、今日が楽しみだったから早く着けたのかも」 その言葉にドキドキしてしまう程度には、俺の心臓は強くない。「俺も、今日が楽しみだったよ。じゃあ、行こうか」 今、俺は彼女をエスコート出来ているだろうか。握った手は柔らかく、すべすべしている。改札を通り駅の中に入ると足湯があり、列車が来るまでの時間をそこで過ごした。 列車の中では、今日観る映画の話をした。今流行りの恋愛ストーリーは、桃華が「観たい」と誘ってくれたのだ。昔は男勝りだった彼女の成長を垣間見れた気がして、微笑ましい気持ちになったのは内緒だ。映画館の最寄り駅に到着する頃には、俺もその映画に興味をそそられていた。正直誘われた当初は、何の興味もなかったのに。これが恋人の力というものか。 映画館の最寄り駅は、県下第二の都市なだけあって栄えている。国宝である城目当てに観光客が訪れるため、彼ら向

  • 呪われた巫女様   イズモサマ 7

     部屋に戻ると、夕飯を食べすぎたからか眠い。「華、大和とうちが風呂入り終わるまで寝ててええよ。その時になったら起こすから」 真矢の目に、眠そうな私が映ったらしい。お言葉に甘えて、「おおきに。ほな、おやすみ……」 うちは自分の布団に入り、意識を手放した。 気がついたら、水の中に居た。それを自覚した瞬間、息が苦しくなったので海面へあがろうとする。しかし、脚を誰かに掴まれているのか全く身体が動かない。おそるおそる脚の方を見ると、そこには長い黒髪をゆらゆら漂わせている、巫女服姿の女性が笑っていた。 ————イズモサマだ! 頭ではわかっても、夢の中なんて一番何も出来ないところだ。誰かがうちのことを起こしてくれたら、すぐに起きられるのに。自力で起きるのは難しそうだ。 酸欠で判断能力が低下している。このままでは死んでしまう、と思えどイズモサマは脚に纏わりついてきて離れる様子はない。このまま溺れ死ぬのだけは嫌や、そう願ったところで「華! 華ってば!」という声が空から降ってきた。たまらず手を伸ばすと、目の前が一気に開けてここが真矢の家だと認識できた。「酷くうなされとったから起こしてもうた、ごめんな」「ううん、むしろおおきに。あのままやったらうち、どうなっとったかわからん」 うちは、真矢に夢の内容を説明した。「イズモサマって何処にでも現れるんやな……怖いわぁ」 真矢の額には、汗が浮かんでいる。「無事で良かった、よかったよぉ……」 やがて泣き出した真矢を抱きしめていると、浴室の方から「うわ!」と大きな声が聞こえた。真矢の身体がびくりと震える。大和だ、と考えが追いつく頃には既に走り出していた。「大和、大丈夫!?」 躊躇せず扉を開けると、パジャマを下半身だけ着た大和と巫女服姿の女性が対峙していた。「あれが、イズモサマ……?」 真矢は初めてその姿を見るからか、いまいち実感が沸いていない様だ。「大丈夫、やけど……こいつがな……」 大和は、視線をイズモサマに向けた。今のうちらでは、太刀打ちできない存在。どうしたらいいのだろう。「……見つけた、新しい私」 イズモサマはというと、真矢をまじまじと観察している。これに何の意味があるのかは不明だが、とにかく良くない状況だということはひしひしと伝わってくる。「嫌や、ちょ、触らんといて!」 イズモサマは大和への

  • 呪われた巫女様   イズモサマ 6

    「あぁ、おばさん。お世話になっとります。……え? 千秋が? ほんまに? 嘘やろ……」 涙ぐんだ声で、何となくだが状況を察せられる。「はい……葬儀は一週間後……わかりました……おばさん、僕も辛いわ……」 葬儀というワードで完全に理解したが、どうやら千秋は亡くなったらしい。実感がない。「うちのせいや……」 それしか思えない。あの時、封印を解いてしまったから。「華、うちも自分のせいやと思っとるよ。一人やない」「そうやで、自分だけ責めるのはやめとき」 電話が終わった大和も真矢に加勢する。「ほんまなら、僕がもっと早く対策を練るべきだったんや。強いて言うなら、全員の責任や」 訪れる静寂。それを破ったのは、大和だった。「部屋の中にも逃げ場がないとなると、次は僕やろな。いざとなったら、僕が襲われている間に逃げるんやで」 その目には、覚悟が宿っていた。「……わかった」「その思い、受け取ったわ」 三人で手を重ね合って、今ここに居ることを実感する。こうしていれば、イズモサマもへっちゃらだと思った。「夕飯、出来たで。三人とも、降りてきてー」 いつの間にかそんなに時間が経っていたとは。うちらは急いで階段を駆け下りる。「そんな急がんでも料理は逃げんって」 そこに並んでたのは、唐揚げやフライドポテトにハンバーグ。そしてサラダ。「皆成長期なんやから、ぎょうさん食べて大きくなりや」 真矢のお母さんの言葉に感謝して、「いただきます」と挨拶をする。真矢と大和もうちに続いた。 唐揚げは衣がサクサクで、歯ごたえ抜群だ。滲み出る肉汁が最高なハンバーグにはデミグラスソースがかかっていて、より味を引き立てている。サラダにはドレッシングではなく塩コショウが降ってあり、新鮮な気分で食べ進めることが出来る。 あっという間にうちらの皿は空っぽになった。「やっぱ、成長期の子はよぉ食べるなぁ。お風呂の準備も済ませてあるから、好きなタイミングで入り。ほな、ごゆっくり」 真矢のお母さんは、空の皿を回収して去っていった。「ごちそうさまでした!」と聞こえそうな声で言い、席を立つ。「お風呂か……どうしよ」「流石に一人一人入るしか無いやろな」 大和がそう提案してきた。確かに、異性の風呂となると見張り番をつける訳にもいかない。何故かと言うと、恥ずかしいから。本当は人の命がかかってい

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status